水虫を起こすカビの一種である白癬菌が足以外の皮膚に感染したものがいわゆる「たむし」です。「たむし」は股にできることが多いのですが、体のどの部位にもできます。「たむし」で来院する人の90%以上は水虫をもっていますので、水虫の白癬菌が自家接種で足以外の皮膚にくっついて発症するものと考えられます。つまり、普通の「たむし」はそれほど感染力の強いものではありません。
しかし、最近、感染力が非常に強い「たむし」が、柔道やレスリングなど格闘技の選手の間に広がっていて問題になっています。これは、特殊な白癬菌であるトリコフィトン・トンズランスが原因です。トンズランスはもともと日本にはいなかった白癬菌ですが、10年以上前に海外遠征に出かけた格闘技の選手によって国内に持ち込まれたようです。トンズランスは普通の白癬菌とは異なって感染力が強いことが特徴で、体の接触が激しい格闘技の選手の間で大流行しています。また、この菌は毛に入りやすいことも特徴で、頭につくと脱毛を起こします。
治療は通常の「たむし」と同じ抗真菌剤が有効ですが、皮膚の産毛にも入り込んでいることが多いので、塗り薬だけでなく、1~2カ月飲み薬も服用する方が確実です。