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そろそろまた水虫の季節がやってきますが、この時期になると写真のような水虫のOTC薬によるかぶれを時々診るようになります。

OTC薬とは、医師の処方箋が無くても薬局で購入できる市販薬のことです(OTCはオーバー・ザ・カウンターの略)。OTC薬は安全性が重視されていますので、その分効果は弱いものが多いのですが、最近は私たち医師が処方する薬と同じ成分が含まれているものもあります。水虫のOTC薬の多くも、水虫の原因である白癬菌に強い抗菌作用を示す薬物が含まれていますので効果は十分あるのですが、時々ひどいかぶれを起こすことがあります。一方、医師が処方する水虫の薬でかぶれを起こすことはあまりありません。これはどうしてでしょうか?

実は、水虫のOTC薬にはメントールなどのかゆみを抑える成分(鎮痒剤)や殺菌剤、消毒薬などが含まれており、これらの成分がアレルギー性のかぶれを引き起こすことがあるのです。鎮痒剤が含まれていれば、塗った時にスッとして一時的に痒みが和らぐかもしれませんが、それで水虫が直ちに治るわけではありません。それよりも薬を根気よく塗って白癬菌の増殖を抑えることが大切で、そうすればいずれ痒みもとれます。なお、水虫は痒いというイメージがありますが、実際には水虫の過半数には痒みはありません。また、白癬菌は殺菌剤や消毒薬では死にませんのでこれも無駄なものです。OTC薬のメーカーは鎮痒剤や殺菌剤を入れることで付加価値をつけて販売を促進したいのでしょうが、むしろこれらがかぶれなどのトラブルの元になる可能性がある訳です。

OTC薬は病院に行かなくても簡単に手に入るので、水虫の治療くらいはこれで十分と思われるかもしれません。しかし、水虫は症状が様々で、私たち皮膚科医にとっても完治させることが難しい厄介な病気なのです。